※2024.11.23 引退※
福島ゆき終列車での録音です
福島交通南相馬線の録音を終え、浜通り側から鉄路で戻ることに。
東北本線をそのまま上って行けば、本日の宿である南福島へたどり着くのですが、『そういえば風変わりな車に出会えるのはこの駅だよな』と思い立ち、あえて途中下車してみます。
元々は東北本線のショートカットルートである国鉄丸森線を引き継いで、第三セクター会社になってから福島まで全通させた阿武隈急行。地元の名士達によって全通に漕ぎ着けた地域に愛される鉄道で活躍するのは、全通時に導入された8100形交流電車。顔を一目みると、どこか国鉄型チックな雰囲気を纏うその車はどうやら713系電車をベースに設計されたものらしく、足回りもそのまま713系と同じシステムを採用しているのだとか。南九州の僻地でしかお目にかかれないと思っていた車の兄弟車が、まさか首都圏から近いところに居たなんて今まで全く知りませんでした。そんな国鉄末期の遺構を残したゲテモノ電車も行く年並みには勝てず、1988年のデビューから37年ほどが経過した2024年現在ではもはや風前の灯。乗るならば今しかなかった訳です。
槻木駅で時間を潰すこと1時間ほど。行き交う列車はどれもHIDの寒々しい光を放つ中、温かい色合いのハロゲンライトが遠くからゆっくりと近づいて来るのが見えて安堵します。
”岩沼・仙台・青森方面”の案内板が、かつてのこの路線が長大幹線だったことを示す名残なのだなと感じつつ、その幹線を持っていた国鉄が全線開通を果たせなかった短絡路線の車内へ乗り込むのでした。
古き良き昭和の営団車を思い起こさせるキノコ型の貫通路を抜けると、半室乗務員スペースの手前の座席へ陣取り録音を開始。
乗り換え階段に近い側のTc車にとどまる者もあれば、降車時の出口である先頭車側に陣を取る者もあり。特に私の至近距離には部活を終えた学生トリオがやってきてしまいました。平日の上り終列車ということもありその刺客はまさに想定外。もはや腹を括るしかありません。列車は時刻通りに動き始めます。
流れ去る景色は闇一色。外の景色を見ることは一瞬で諦め、ガッシリとした見た目とは裏腹に、まるでどこかのステンレス車のような軽やかなモーター音を奏でながら走るゲテモノミックス感を存分に堪能。この頃は渋沢栄一翁の10000円札が話題となった新札が流通され始めた時期だったこともあり、運賃機が新札に対応していない中、各駅に到着する事に運転手氏が丁寧に降車客の対応をしているのも印象的でした。
30分ほどコマを進めた頃、ヒソヒソ話で盛り上がっていた学生トリオがついに下車。ここからは眉間にシワを寄せることもなくなり、気がつけば終着駅の福島へ辿り着いていたのでした。
この訪問から1ヶ月後、AM8111号車を含むA-11編成の運行が2024年11月23日で終了する事が発表されました。この時に寄り道をしていなければ、永久に会うことが出来なかったAM8111号車。旅は急がば回れなのだなと改めて感じたK.Nでした。